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Channel: 血は水よりも濃し 望田潤の競馬blog
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第83回日本ダービー回顧~ディープ牡駒王道配合、息を呑む鋭さで頂点へ

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東京10R 日本ダービー
◎14.ヴァンキッシュラン
○8.サトノダイヤモンド
▲1.ディーマジェスティ
△12.リオンディーズ
☆3.マカヒキ
皐月賞につづいてサトノダイヤモンドでいきたい気持ちはあるのだが、ヘイローの塊のようなこの配合に東京2400で◎を打つとなると、オルフェーヴル並みの怪物級の確信が欲しい。ディープ産駒ではマカヒキとヴァンキッシュランがナスキロ的斬れ味とバークレア的スタミナの両方を押さえた配合をしていて、キズナやディープブリランテと同じ路線のダービー向き中距離王道配合と言える。ただしマカヒキもヘイローのニアリークロスを重ねたぶん、ちょっと反応が鋭敏で軽すぎるのが東京2400で気になるところ。リオンディーズはダービー馬とオークス馬の父母相似配合だから東京に舞台が替わるプラスは大きいはずだが、半兄エピファネイアが気分よく走ったときに見せた超抜パフォーマンスほどの爆発力まではまだ感じられない。兄はダービー◎だったが弟には打ちきれなかった。ヴァンキッシュランの母リリーオブザヴァレーはディープブリランテの母ラヴアンドバブルズと血脈構成が似ていて(サドラーズウェルズ≒ヌレイエフ、ミスワキ、ミルリーフ≒リヴァーマン、リファールなどが共通)、リリーはオペラ賞(仏G1・芝2000m)勝ち、ラヴはクロエ賞(仏G3・芝1800m)勝ちとフランスの芝中距離重賞を勝っているのも同じ。馬のタイプも似たところがあって、ディープ産駒にしては掻き込む走りで鋭さには欠けるが持続戦でしぶとい。全体としてもディープブリランテを少し距離適性長めにしたのがヴァンキッシュラン、というイメージでいいだろう。内田博とも手が合うタイプだし、青葉賞勝ちで持続力には自信を持って挑めるから、ディープブリランテが勝ったときのようなレースができれば最後に二枚腰発揮とみた。

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上位人気馬が1~3着を占めたので、ひとまず「競馬道OnLine」の血統解説をそのまま再掲します

サトノダイヤモンド
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2013106101/
Halo的早熟スピードで抜け出す
母マルペンサはR.V.マンシリャ大賞典(亜G1・芝2000m)などの勝ち馬。母父OrpenはLure(BCマイル連覇の名マイラー)の代表産駒でモルニ賞(仏G2・芝1200m)勝ち。マルペンサはHalo4×3、Northern Dancer4×4、Natalma4×5・5。血統表の3/4でAlmahmoudの子孫の血を何重にもクロスしている。自身はHalo≒Sir Ivorのニアリークロス3・5×4・5。まだ体質的には緩さも残るが、Haloのクロスらしいフワッとした自在性あるスピードが武器で、レースぶりが大人びていて何でもできる馬だ。皐月賞は前傾ラップを早めに動いてきつい競馬になった。叩いた上積みがあれば、今度は好位抜け出しで後続の追撃を凌ぎきるか。

ディーマジェスティ
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2013104704/
パワーと持続力は名門牝系譲り
ホクラニミサの全弟でセイクレットレーヴやワールドレーヴの半弟。叔母エルノヴァはステイヤーズS2着、クイーンS2着、エリザベス女王杯3着など牝馬らしからぬスタミナとパワーを誇った。3代母Doff the Derbyの産駒に英ダービーやキングジョージに勝った名馬ジェネラスがいる。母はブライアンズタイム×Sadler's Wells×Margarethen牝系だから皐月賞馬ヴィクトリーやダート王フリオーソと似た配合で、だからディープ産駒ながらパワーと持続力に富み、皐月賞でも直線の急坂を駆け上がるときのパワーが圧巻。距離延長は全く問題ないが、東京の良で上がりだけの競馬になってしまうと、鋭さ負け軽さ負けの心配はまだついて回る。

マカヒキ
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2013105788/
カミノリの斬れ味、鋭敏さでは一番
ウリウリやエンドレスノットの全弟でトパンガの甥。母母リアルナンバーはヒルベルトレレナ大賞(亜G1・ダ1600m)勝ち馬で、その母Numerariaは亜1000ギニー(亜G1・ダ1600m)に勝った。ディープインパクト産駒で母系にサザンヘイローが入ってHaloをクロスするのはサトノダイヤモンドと同じ。手先が軽くて脚捌きに無駄がなくて瞬時に加速できるところも似ているが、こちらのほうが俊敏さ鋭敏さは上で、まさにカミソリの斬れというべき追い込みをみせる。この鋭敏な末脚は、東京だとむしろスローの上がり特化のレースのほうが映えるかもしれない。

木曜にMahmoudさん日夏さんとホルモンに舌鼓を打ちつつダービーを検討していたときにも言ったんですが、最近の東京芝中距離のG1は前半流れても中盤以降でかなり中弛みして上がり3Fが速くなることが多く、今年のダービーとオークス、昨年のJCとダービーがまさにこのパターン

マイネルハニーの逃げは1000m通過が60秒ですからまずまずのペースなのですが、そこから12.9-13.1とかなり中弛みして上がり3Fが11.6-11.0-11.6(全て公式ラップ)、こうなると末脚の持続力よりも鋭さの勝負で、オークスに続いてHaloをクロスするディープインパクト産駒のシャープさがモノを言うこととなりました

そしてマカヒキがサトノダイヤモンドの直後からインをすくうときの、残り400mからの最速ラップのところでの反応がまた際立っていて、サトノもあそこでビュンと交わされたぶんを最後また詰めにかかっているんですが、あの狭いところを割って出るときの川田の挙動とそれに応えるマカヒキの凄い反応、あれが2013年生のサラブレッド6913頭の頂点を決めるハイライト



「マカヒキが東京2400のダービーを勝ちきるとなると、スタミナとか距離適性云々以上に末脚の質という点で、エイシンフラッシュが勝った2010年のようなスローの上がり特化になったほうが可能性はあるんじゃないか」と「思いつくままにダービーウィーク雑感」では書きましたが、レース上がり34.2はその2010年に次ぐ速さでした

同じエントリで「母がNorthern Dancerのクロスで、自身はナスキロクロスとBurghclereのニアリークロスだから、ディープ牡駒の中距離王道配合、キズナ駅やディープブリランテ駅と同じ路線上にマカヒキ駅もあるのだ、という言い方をしたい配合」とも書きました

12年ディープブリランテ(1着)、13年キズナ(1着)、14年ベルキャニオン(8着)、15年サトノラーゼン(2着)、そして16年マカヒキ(1着)、ダービーで最先着したディープ産駒は、いずれもナスキロのクロスとBurghclereのニアリークロスを併せ持つ中距離の王道配合です

マカヒキの母系に入るBold Lad(IRE)の母母Fair AlyciaはAlycidon×Fair Trialの組み合わせで、ディープブリランテの母父Loup Sauvageの母母AlcoaはAlycidon×Court Martial(その父Fair Trial)の組み合わせで、ディープインパクトの母母BurghclereとはDonatello,Aurora-Hyperion,Fair Trialが共通します

 ┌Donatello
┌Alycidon
││┌Hyperion
│└Aurora
Fair Alycia
│┌Fair Trial
└△

<Burghclereの血をニアリークロスすることがスタミナ獲得に有効なのは、ディープ産駒で最も長距離を得意とするファタモルガーナ(ステイヤーズSとダイヤモンドSで2着)や中山大障害に勝ったレッドキングダムが、ともにBurghclereの血を色濃くニアリークロスしていることからも明らかでしょう

ただ不思議なことに牝駒の場合は、ジェンティルドンナもデニムアンドルビーも(追記:ミッキークイーンもシンハライトもマリアライトも)長距離をこなすのにBurghclereのニアリークロスは持っておらず、このニアリークロスは牡のほうがスタミナとして伝わりやすいのかもしれません>(15/6/15「春のG1、ディープとキンカメの復習」)

だからBurghclereのニアリークロスのスタミナは、マカヒキには伝わったけれどウリウリにはあまり伝わっていない、という言い方もできるかと

ディーマジェスティは皐月賞と全く異なる質のレースで僅差3着はさすがというしかなく、リオンディーズはエピファネイアとの超ハイレベルな比較でいうとフォームにしなやかさや優雅さや華麗さがほんの少し足りず、東京の直線でも兄ほどは爆発しなかった、というべきかと

「他のディープ産駒と比べると前肢が出ないなあ…」と隣でパドックを見ていたオッサンがつぶやいてましたが、ヴァンキッシュランは青葉賞(上がり11.6-11.9-12.3)やディープブリランテが勝った年(11.7-12.0-12.4)ぐらい持続戦にならないと、末脚の鋭さではハッキリ見劣るのはわかっていたし、イン伸び馬場で他馬より一頭ぶん外を回らされたロスもありました

前日予想を入稿した後、一杯やりながらゲンダイのウチパクの独占インタビューを読んでいたら、「何でもできる乗りやすい馬だが、タメればもっと斬れそうなイメージがある」と語っていて、いやいや、他のディープにわざわざ鋭さ勝負を挑んでどうすんねん…とほっきの酢味噌和えを吹き出しそうに(^ ^;)

母父Singspielがオークスを制した直後とはいえ、「3歳春のクラシックにおいては、ディープ産駒は母父マイラーが大正義」と書いてきた私としては、フレンチデピュティやOrpenを差し置いて母父Galileoにダービーで◎を打っていいのか、それで筋は通ってるのかとモヤモヤしたまま南武線に揺られて競馬場入り

和服が似合いすぎて笑点に出てる師匠みたいになってきた加藤栄さんとすれ違ったので軽く挨拶して、昼休みのジョッキー紹介イベントをボーッと観ていたら、ウチパクがいつものようにバク転を決めて客席を湧かし、直後に石川くんがでんぐり返りで登場してまた湧かしてました

もう45歳やのに、きれいに決めるもんやなあ…と思ったら着地時に少しバランスを崩してヨロッとして、ああたぶん俺のダービー予想も着地をミスってる、もっとヨロヨロしてる、やっぱり着地点はヴァンキッシュランではないんやろうなあ…

発走時刻が近づいてゲート付近に馬が集まってきてもモヤモヤを引きずったままで、ダービーで◎を打つべき血統、ダービーを勝つべき血統、ダービーを勝ってほしい血統、そんな命題がぐるぐる駆け巡るばかりで、俺はこの一年間何をやってきたんやろう

ファンファーレが鳴って大歓声が湧き上がる中、ああこの期に及んでやっとわかった、土壇場になってヴァンキッシュランで斜めに構えてみたけど、俺はずっとサトノダイヤモンドに勝ってほしかった

Haloお化けのサトノダイヤモンドに、2016年のダービーを勝ってほしかった

そう思った瞬間から頭の中は真っ白で、もうダービーも30回観てますが、こんなふうにスタートからゴールまで真っ白やったことは今までなかったです

素晴らしいダービーを、今年もありがとう


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