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Channel: 血は水よりも濃し 望田潤の競馬blog
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天皇賞・春回顧〜田辺の丁寧さと、Princely Giftの“下る力”が一角を崩す

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京都11R 天皇賞
◎18.デスペラード
○14.キズナ
▲7.フェノーメノ
△8.ゴールドシップ
△12.ウインバリアシオン
×17.ヒットザターゲット
二冠馬ネオユニヴァースは典型的な中距離馬で、皐月賞ではサクラプレジデントに競り勝ち、ダービーではゼンノロブロイをねじ伏せたが、菊はザッツザプレンティの捲りを追いかけたものの、あと200mで一杯になってリンカーンにも差されてしまった。翌年は始動戦の大阪杯を59キロで完勝、続く春天では2人気に支持されるも、イングランディーレの大逃げの前に10着に沈んだ。しかし息子のデスペラードは母から濃厚なスタミナを受けて晩成ステイヤーと化し、6歳春にようやく完成のときを迎え、先週も今週もうなっていると表現するしかない凄い追い切りをこなし、イングランディーレで逃げ切った天才騎手を背に、淀の長距離決戦に歩を進めてくる。父や母のコピーはつくれない、父や母を超えるためには、何か新たな強さを身につけて変化していかなければならない、サラブレッドの配合とはそういうものだ。だからネオユニヴァースにスタミナを入れすぎてクラシックの晴れ舞台とは無縁だったデスペラードが、雌伏3年のときを経て、父が苦手とした淀の長距離戦で、父がスタミナ切れを起こした残り200mで先頭に立ち、母から受けたおびただしい数のハイペリオンを最後の一滴まで振り絞り、ダービーや皐月賞で脚光を浴びてきた馬たちを撃破する、そんなことが時にはあってもいいだろう。マイネルキッツやジャガーメイルが、ヒルノダムールやビートブラックが、ついに勲章を手にする、そんなレースが一つぐらいはあってもいい。

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キズナはゴール前で内からホッコーブレーヴに交わされた絵面が悪くて、誤解を恐れずにいえば、あの絵面だけで「意外に伸びなかった」と言う人が多いんじゃないかと思います

でももともとこの馬はナスキロ的斬れとハイインロー的持続力が幹の配合で、ジェンティルドンナやトーセンラーのようにFair Trial的なところはいじってないので、ディープA級産駒のなかでは俊敏さや脚の回転はそんなに速いほうではありません

だからこそ東京や外回りで持続力を要求されるレースになったときにベストパフォーマンスを叩き出してきたわけで、大阪杯では内回りの4角でこれまでにない反応をみせた点に成長がうかがえたものの、それでも本質は大きくは変わらないというべきで、だから上がりが11.0-11.7と速くなっても最後ジワジワ詰めてきたというのは、やっぱり3歳時よりは着実に成長しとるんやなあ〜というのが私の感想

4角ではウインバリアシオンの直後にキズナが取りついていたのですが、そこからの加速の仕方や末脚の伸ばし方に両者のキャラの違いが浮き彫りになっていて、残り400〜200m、上がり11.1の最速ラップのところでは明らかにウインの加速が上回っていてキズナは半馬身ぐらい離されてしまうんですが、200m〜ゴールまでの11.7のところではクビ差まで詰めてるんですね

あの最速ラップのところで11秒を切るラップでビュンと急加速できないのがキズナであり、しかしラスト1Fの脚色は1,2着馬より優っているわけで、だから繰り返しますが横にいるホッコーがラスト1Fでかなり斬れているので伸びてないような錯覚を起こしてしまうのであって、2000mや2400mを走っているときと比較しても、決してバテているわけでも、脚色が鈍っているわけでもないと思います(しかも後述しますが、ホッコーは勝負どころで脚温存してますから)

単純にフェノーメノとの着差だけでいうと昨年のトーセンラー以上には駆けているわけで、ディープの最強牡駒といえるだけの走りはみせたと思うし、上がりが11.8-12.0ぐらいだったならば結果はもうちょっと違ったかもしれませんよ

フェノーメノとウインバリアシオンとゴールドシップについては、「血統クリニック」で書いたことに特に付け足すことはないのでそちらを読んでくださいということで、あとは1文字も触れられていない(^ ^;)ホッコーブレーヴについて書いておきます

今の京都のイン伸び高速馬場において、4強の中ではフェノーメノだけが道中ラチ沿いを走りつづけ、直線もスムーズに外に持ちだしながら追い出すというロスのないレース運びで、いつもにも増して出遅れてしまったゴールドシップや勝負どころから外々を回らざるをえなかったウインバリアシオンやキズナに対しては、これがアドバンテージになっていたことは明白でした

そしてフェノーメノの直後のラチ沿いをずっとついて回って、直線もフェノーメノが抜けたあとを追い出してきたのがホッコーブレーヴで、つまりフェノーメノと全く同じコースロスのない競馬で、2,4着馬が脚を使っていた3〜4角でジッとしていられたことが、賞味残り400mに末脚を凝縮することができたことがあのゴール前の斬れ味につながったのはたしかで、そこは田辺のソツのなさが光りました

大一番でレースを動かしたり主導権をつかんだり、そういう戦略的なファインプレーはまだあんまりみられませんが、見た目や言動とは裏腹に実に丁寧に乗るジョッキーで、丁寧すぎるのが逆に物足りないときもあるぐらいですが、今日のホッコーブレーヴの騎乗はほんとに丁寧でソツがなかった

そして丁寧に脚を温存されたことでホッコーブレーヴも持ち前の斬れ味を存分に発揮、この斬れ味はHalo≒Drone3×4だけでなく、母母に入るサクラショウリやPrincely Giftの柔らかさ由来で、だから一言コメントでは“桜勝利的柔斬”と書いたのです
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008102064/

パーソロン、フォルティノ、Princely Giftというのはフレンチな斬れ味のイメージで、ダービー馬サクラショウリは父や母父として平坦向きの少し非力な差し馬をよく出しましたが、ホッコーブレーヴが東京や新潟を専門に使われてきたのは左回りが得意だからというよりも、直線が長くて急坂がないコースが合うからで、右回りでも下級条件ですが小倉2600mを凄い追い込みで勝ってます

そういう平坦向きの斬れ味で東京2400mを追い込んでいた馬が、ウインバリアシオンのひと捲りの恩恵があったとはいえ中山内回りで鋭く斬れたのですから、日経賞2着は実は成長の証だったということで、そこを見抜けなかったのは節穴だったと言われても仕方ないですね…

そしてホッコーブレーヴの柔らかな体質と前駆がきれいに伸びるフォームにはPrincely Giftの影響も少なからず感じられますが、先日も書いたように京都の長丁場はPrincely Gift的な“下る力”がモノをいうのだということを、改めて思い知らされた春天でもありました

デスペラードはペースアップしたところでアッという間に圏外へ、負けるにしても内容が悪すぎてちょっとコメントのしようもなく、まあノリらしいといえばそれまでなんですが(^ ^;)、ただまともに走ったとしても、この上がりではステイヤーらしさで勝ち負けするのは難しかったんじゃないかと

日経賞組が上位を独占、“柔肉デインヒル”と“胴長しなやかStorm Bird”の叩き合い、Princely Gift持ちの1,3着、超高速馬場の春天において要求されるものは何なのか、いろいろと示唆に富んだ結果ではあったと思います


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